【記者魂18】静かに話が進む日中韓FTA

日中韓首脳会談に関連する報道で唐突感を持ったのが日中韓FTAに関する問題だ。これについて、日中両国が韓国に働きかけるという構図になっているが、日本のこうした積極姿勢について、TPPに比べていやに世間が静かだ・・・という点に疑問が生じる。

中国産の安いコメが日本に入ってくることに関しては、例外扱いになるから構わない、或いは、中国の模倣品が問題となる中で注目されている知的財産の保護については、ISD条項が適用になるので心配ない・・・こんな解説が随所でなされた。しかも、マスコミの解説記事はTPPに比べると小さい。

だが、ちょっと、待って欲しい。コメに関する例外扱いは主張が同じため百歩譲れるとして、ISD条項の適用はどうか・・・TPPでは、あれだけ反対の声が大きかったではないか。この二枚舌・・・果たして国際ルールで通用するかどうか、疑問に思うのである。

筆者は議員になる前、各FTAに関して取材活動をしてきたほか、各種勉強会にも参加。なかんずく、勉強会において、必ずと言っていいほど、話題になるのが、中国と貿易協定を結ぶ際、知的財産の保護を徹底できないのであれば、安易に結ぶのは危険・・・という点だった。

自由貿易主義、市場経済重視を以前から主張してきた筆者とすれば、日中韓FTAに反対するものではない。以前、株式市場において「対中輸出を内需として捉えよ」・・・という見方が広がったが、人口が減少して内需が縮小する日本は、将来的に中国市場で商売をしなければ、経済が持たないと思っており、その足がかりになるFTAは必要だと思うためだ。

「政冷経熱」と日中関係を例える言葉がある。尖閣問題等で日本の国益を脅かすようなことが目立つため、政治的な関係が冷え込んでもやむを得ない。しかし、経済については、日本の豊かな生活を維持するために、冷え込ませてはならないだろう。それは、中国側も同じであり、ために「政冷経熱」と言われるのだ。中国が好きとか嫌いということで語ってはならないのである。

ゆえに、賛成しながらも、とりわけ知的財産保護については、慎重に議論しなければならない・・・そう訴えたい。賛成であっても、問題点を冷静に整理、その上で推進するという立場だ。それは、TPPに関しても同じである。賛成派だって、国益がかかってくる部分を、何も各国の主張を丸呑みしようなど思っている訳ではないのだ。

話は戻って、FTAとTPP、共通する課題があるはずなのだが、一方は静観、もう一方は大騒ぎ・・・これはどういうことなのだろうか。農業問題に関して、共通の課題からある日中韓FTAの方がアバウトなイメージがあるので、コメを中心にTPP反対を唱える勢力の言い分はまだわかる。

しかし、ISD条項をことさら取り上げるTPP反対の勢力・・・方や米国主導となる恐れがあので反対、方や中国がメンバーなので賛成・・・“二枚舌”の理由がかりにそうであるとしたら許されるものではないだろう。経済をイデオロギーで語る理由は、とうに終わりを告げ、グローバルな視点、日本の経済成長をどう考えるかが重要だからだ。

いずれにしても、TPP、FTAともに感情を交えず、冷静に議論する必要がある。日中韓FTAでは、千葉県にも先端産業があるため、培ってきた技術が簡単に流出させないためにも、日中韓FTAについては、知的財産の保護を徹底させるように政府は取り組んで欲しい。