※ハフィントンポストにコラムが掲載されました。
最近まで“対米従属”の対語として使用される言葉は“自主独立”だと思っていた。
日米安保を軸とした親米路線の保守派を攻撃する際のおなじみのフレーズである“対米追従属”──冷戦下の55年体制下で保守と革新が対決していた時代、親米でなければ親ソということで極めて明確だったものの、冷静終結後にソ連が崩壊、その後は保守陣営の中で親米保守と反米保守の2派が、或いは、親米保守と冷戦下で反ソだった一部の左の勢力とが対立しているものだと理解していたのである。
あくまでも、感覚的なものと断ってから記すが、一連の安保法案を巡る動きを見ていて、この法案に反対する側は、本当に“自主独立”なのだろうかと疑問に思い始めた。
日米同盟の強化によって、一番困る国はどこなのか?──冷戦下においてはソ連だったのは言うまでもない。しかし、今なら中国とするのが、事実の積み重ねから客観的に見て妥当であると思われる。決して好き嫌いからではなく、南沙諸島の埋め立てなど環太平洋における中国の行動、それに対し米国がけん制していることが大きい。
米国政府は、中国に対して南沙諸島の埋め立てや軍事基地化を中止するように要求しているのである。中国が無視した場合、過去の経験則からみて、有事に発展する可能性がゼロとは言えないだろう。有事に至らないまでも、米中が衝突すれば、中国にとって日米安保があるとないとでは、戦略上大きな差になるのは確かだ。
先に記しておくと、安保法制を推進する勢力だって戦争をしたい訳ではない。基本にあるのは、攻められた時に“誰が国を守るのか?”という議論だと思う。現状では、間違いなく“日米同盟”によって強大な米国の軍事力が抑止力になっている。
では、“自主独立”で日本が他国から侵攻を受けた時、国を守り切れるのか?百歩譲って、中国とは経済交流が切っても切れない仲にあるため、日中の全面的な軍事衝突は両国の国民経済を考慮すれば現実味は薄いと思われるが、やはり“日米同盟”強化が困る北朝鮮はどうか。伺い知れない国なので、日本に侵攻する可能性がゼロとは断言できないだろう。
日米安保はダメ、“自主独立”は心もとない──そうなると、取るべき道はただ1つ、それは中国へ接近だ。
明確な対案を出さない以上、安保法制に反対する勢力が国をいかに守るかについての考えが見えてこない。何をしてくるかわからない相手もいる現状を踏まえれば、まさか冷戦下で言われた“非武装中立”を対案として出さないだろう。
おそらく、“自主独立”が中心なのだろうが、反対する側には、中国への接近、“対米従属”に対する“対中従属”を掲げようとする勢力も少なからず含まれているのではないか──そう感じられてならない。その点をはっきり見極めたいと思っている。