災害対策基本法に基づき策定する千葉県地域防災計画は、昭和38年(1963年)の策定以来、これまで31回修正を行ってきましたが、昨年の東日本大震災で課題が浮き彫りになった津波や液状化への備えに対応するため、新たに修正を行っています。
県当局がまとめた修正案の概要によると、計画修正の基本方針として、(1)東日本大震災の被害・対応・教訓を踏まえ、より実効性の高い計画の見直し、(2)あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波を前提とした計画の見直し、(3)減災や多重防御の視点に重点を置き、ハード対策とソフト対策を組み合わせた総合的な防災対策の推進──など、3つの視点を挙げました。
これらを踏まえ、見直しの重点項目として、(1)地域防災力の向上、(2)津波対策の強化・推進、(3)液状化対策の推進、(4)支援物質の供給体制の見直し、(5)災害時要援護者等の対策の推進、(6)帰宅困難者等対策の推進、(7)庁内体制の強化、(8)商社性物質事故対策計画の見直し──の8つを挙げています。
津波と液状化・・・これらについて課題が多いため、この修正、評価できると思いました。ですが、個人的に感想を述べると、従来、大規模地震が発生した際、発生が心配されていた火災が脇に置かれている・・・という点です。
担当者にこの点を聞いたところ、従来の防災計画は火災に重点が置かれていましたが、3つの視点を踏まえ、津波・液状化対策を充実させるというものであり、防火対策に関しても十分盛り込んでいるとのことでした。
確かに、詳細をみると、火災に関する記述もあります。これは、修正案を読む人によって、十分かそうでないかは、見方が異なるでしょう。しかし、津波や液状化を強調するあまり、火災について決して軽んじている訳ではなくても、そのように捉えてしまう人も出てくるのではないでしょうか。
東日本大震災では、津波・液状化の被害が甚大で、火災による被害は話題にならなかったのですが、阪神淡路大震災を思い出しても、防火対策を十分行う必要があります。もちろん、津波や液状化の対策の議論が、防火に比べて十分ではなかったと思われ、前述したように今回の修正を筆者は評価しているものの、首都直下型地震が起きた場合、住宅密集地がどうなるか・・・本県も県西部には地震の際に火災リスクが高まる住宅密集地があるだけに、防火についても今まで以上に議論を深めるべきと思っています。
なお、このテーマに関連して、ウォールストリートジャーナル日本版サイトでコラムを執筆しましたので、この文章をクリックしてお読みになって下さい。