【真実を発信297】統合リゾートをやるなら徹底的に・・・IR議連マカオ視察

3月20日~23日の日程で千葉県議会IR(統合リゾート)推進議連は海外視察を行い、そのメンバーの1人として参加しました。昨年の韓国に続いて今年はマカオです。

初日と最終日は移動に費やされ、現地を視察したのは実質2日間。マカオを代表するIR施設であるザ・ヴェネチアン・マカオ・リゾート・ホテルのほか、マカオ大学での講義、欧米資本とアジア資本のカジノなどを視察し、充実した内容でした。

まず、ヴェネチアンですが、3000室の客室に15000人の従業員が働いています。カジノだけではなく、コンベンション施設、アリーナ、アメニティ、ショッピングモールなどを備えたIR施設と言えるでしょう。2007年にオープンしたアリーナは15000人を収容でき、ここでは毎週1回、コンサートなどのイベントが開かれています。

ただ、こうした施設の多くは赤字運営・・・それをカジノの利益でカバーしている格好です。昨年、韓国で視察したIR施設、江原リゾートも、大半の施設で生じる赤字をカジノが支えていました。IRを運営するためには、カジノ抜きでは赤字を覚悟しなければならない、そんな構図が浮かび上がります。

マカオ大学では、特別にフォン教授が議連メンバーに講義を行って下さいました。マカオのカジノの歴史から、カジノがマカオ経済に及ぼす影響。さらには、カジノの収益状況など貴重な話を聞けたと思います。

フォン教授によると、マカオの税収の80%がカジノによって賄われているとか。歴史的には、2002年まで1社独占だったのが法改正によって、他の資本にもライセンスを開放したことで一気に街中に施設が広がり、現在では35施設まで増えました。年間のカジノ収益は全体で3463億香港ドル(1香港ドル=約13円)に達し、1テーブル(マカオでは大半がバカラ)の1日あたりの純利益は2万米ドルと推定されています。

フォン教授は日本でカジノを始める場合について「何か所も建設しない方がいい」とアドバイスしていました。実際、韓国やオーストラリアなどでは、解禁してから10か所程度の都市、地域に開設したところ、黒字化している施設は一部にとどまっている現実があります。

3日目に視察した米国資本のMGMでは現地のジョン・シグレーCFOが自ら説明して下さいました。MGMは本場ラスベガスでおなじみ。マカオの施設には51%出資しています。IRで先行しているラスベガスと、カジノ中心のマカオの両者を比較が興味を引きました。

IR施設の収益についてマカオでは大半をカジノが占めているのに対し、ラスベガスでは40%に過ぎません。たとえば、マカオの顧客の平均滞在日数が2日間である一方、ラスベガスは3日以上でカジノ以外のグルメ、ホテルライフなど多角的な分野に注力しています。

マカオは、実際にカジノを見学したところ、どこも中国人が客の大半を占め、彼らが熱中している様子が伺えました。同CFOによると、過去に20億香港ドルをかけてショー施設を整備したところ、失敗に終わったとか。この点、何を求めて客はくるのか・・・それを明確にして運営しなければ、IRの経営は成り立ちません。

同CFOの日本に対するアドバイスを要約すると「建築など地域に協調したものを作る。日本の食事はトップレベルなので、それを活かすべき。新たにフィリピンのマニラに建設されるなど、周辺国での競争が激しくなる中、お客さんが来やすい環境づくりを行う」などでした。

カジノ導入については、依存症などネガティブな問題もあります。マカオでは、それを象徴するように、街中に質屋が溢れているほど。そのためには、シンガポールで導入しているような、内国民は100シンガポールドル(年間なら2500ドル)の入場料を徴収するなどのハードルを設ける必要があるかもしれません。

IRを設置するなら、中途半端な施設を建設しては、無駄な箱物が将来の世代にツケとなって残る・・・今回の視察を通じて改めて実感しました。そこでは、各種施設を運営するためにカジノが必須となりそうです。いずれにせよ、日本人、海外観光客のいずれを誘致するとしても、当たり前のことながら、面白いと感じさせるものを作らねばなりません。

単に建設すれば賑わうというものではなく、実際に法改正がなされ、カジノが解禁となった際には、顧客ターゲットを踏まえたコンテンツの研究、シミュレーションを十分に行う必要があるでしょう。千葉にカジノ併設のIRが導入された場合、今回の視察で得た知識を活かし、議会で議論したいと考えています。