記者時代、上場会社を取材した際、業績見通しの前提条件について予想が甘いと感じた際に、「投資家」の代弁者として、それを追及するとともに意見を述べたことが何度かありましたが、議員になってからも早速、同じような場面が訪れました。
県には公社がいくつかあります。損をすれば、税金で穴埋めするケースも生じるため、その運営や財務状況は厳しくチェックしなければなりません。住宅供給公社の前年度における決算について、記者時代に企業を追及した時と同じように、今度は「県民」の代弁者として担当者に対して追及、そして「こうすべきではないか」と意見を述べました。
千葉県の住宅供給公社は、特定調停(平成17年1月成立)後に、ミニバブルによって一時的に改善する局面があったものの、リーマンショック後の不動産市況悪化に伴い再びダウン、昨年度は8700万円の損失を計上しました。この期末の債務超過額は55億円となっています。
弁済原資となる繰越金残高は、前年度末で約15億円計画を下回っていますが、公社では赤字の原因となった借上特優賃事業(特融賃)が終了する平成30年度までの期間に、保有地の処分等により弁済原資を確保する意向。この処分に関しては、TX沿線で販売がスムーズにいきそうな流山の物件が期待できるなど、心配ない印象があります。しかし、慢性赤字体質である特融賃の存在が・・・。
特融賃とは、簡単に言えば、マンションを一括して借り上げ、一定の家賃収入をオーナーに保証する一方、家賃減額補助制度によって入居者の負担を軽減するもの。良質な民間マンションを供給する趣旨で始めた制度でした。オーナーは建設費の補助も受けています。
入居負担額が毎年3.5%上がる仕組みなのですが、民間の新築マンションとの競争を踏まえれば、建物の老朽化と補助の逓減で古い物件の空室率が上昇するのは想像に難くありません。それでも家賃保証した分は支払うため、入居者数が減るのと比例する形で赤字は膨らむことになります。5年前に92.1%だった入居率は前期末に81.4%まで低下しました。
県では、現在の仕組みを改めて入居者負担額のフラット化を進める一方、積極的なPRなど営業努力を行い、入居率の上昇を図る意向ですが、それで入居者減少に歯止めをかけられるという予想、甘いと言わざるを得ません。
不動産市況が悪化している現在、安く借りられる新築物件が増えれば、公社の古い物件は競争激化から入居率は、むしろ今後も下がり続けると予測し、対策を練るべきではないでしょうか。
私は担当者にその点を質し、「30年度まで、どこまで赤字が膨らむかわからない深刻な事態と思われるので、民間企業が損切りを躊躇わないように、違約金支払いも含めて一気にここで損失計上して今すぐ制度をストップする選択肢はないのか?」と意見を述べました。
お役所が始めた事業であるがゆえに、最後まで契約遵守すべき・・・というのもあるかもしれませんが、その一方で、貴重な税金が赤字垂れ流しの事業で毎年消えて行くことも許されません。
県土整備常任委員会委員として、この点に関し、今後もチェックし続けたいと考えています。
(水野 文也記す)