※ハフィントンポストの以下のコラムが掲載されました。
国会の論戦で、アベノミクスの〝第1の矢”である大幅な金融緩和の効果が争点になっている。「庶民の生活が楽になっていない」──確かに、その点は否定しないものの、では、大幅な金融緩和を行っていなかったらどうなっていたのか。日本経済は今より悪い状態になっていたと思わざるを得ない。
2012年暮の政権交代によって、経済政策が大転換し、株価が上昇したのは疑いがないところだろう。大胆な金融緩和を行い、物価上昇率を2%とする目標を政府が設定。いわゆるインフレターゲットで、そこからデフレ脱却を目指した訳だ。今もって、道半ばと言えるものの、その後、株価は大幅に上昇、賃金も統計上は多少なりとも上昇しているという事実があり、効果が無かったと言うには無理が生じる。
株価が上昇した背景のひとつに、外為市場で急速にドル高/円安が進行したことが挙げられよう。リーマンショック時に、米国が資金供給を3倍とする一方、日本は3割増やしただけ。これによって、円高を余儀なくされ、輸出型企業が大きなダメージを受けたのは記憶に新しい。そうした状況を変化させたのが大胆な金融緩和。為替相場は円安となり、企業業績は回復、株価上昇を後押ししたのである。
では、ここで金融緩和を止めてしまったらどうなるか。おそらく、円高局面に逆戻り、輸出企業の業績見通しに対して不安感が増幅され、ただでさえ、中国経済への懸念から不安定な株価が崩れることは想像に難くない。そうしたら、年金の運用もズタズタになり、結果的に弱者が困ることになる。
幸い、現政権は政策転換を考えている様子はないうえ、景気が上向いた米国が利上げに動いているため、日本が金融緩和をストップさせるという最悪の事態は避けられそうだ。金融緩和を”政局”のツールにしようとするのであれば、それは止めて欲しい。時計の針を逆戻りさせたら、暮らしが楽になるという実感を得るどころか、今より厳しくなってしまう。