平成24年度決算審査特別委員会についてこれまで記してきましたが、今回で前半部分が終了。3日目に警察本部とともに審査が行われた教育庁に関して報告します。
まず、毎年のように取り上げられる奨学金ですけど、県の事業費では6億4300万円、2138人が利用しています。高校授業料の無償化政策が実施されながらも、学費は授業料だけではありません。奨学金の意義が確認されました。ですが、それを充実させるためには、未収金の増加問題を解消しなければならないでしょう。24年度は未収入金、つまり、何らかによって返済されていない額が3818万円。当局では、これらを回収マニュアルの作成など対策を講じるとしていました。
職業科の生徒などが生産した農作物などの生産物は、一般に販売されています。県の会計では、これらは生産物売払収入として計上。これらは、いったん県に収められた後、実習費として各学校に交付する仕組みとなっています。生徒のモチベーションを上げるためにも、交付されたお金が自分たちの教育に役立てられることがわかるようにすべき、との指摘が委員の間から出ていました。
昨年度から始まった中学校の武道必須化に関して、私は一昨年9月の代表質問でその安全性について取り上げた経緯があります。大きな事故は起きていないようですが、県では引き続き指導者の講習会等スキルアップを図っているとの答弁がありました。県下の中学校で武道場を備えているのは64.8%。武道場がなく柔道を行う際は畳を敷くことになりますが、その場合、畳と畳の間に隙間が生じて事故が起きやすくなるので、しっかりした管理も必要になります。
委員会では昨年実施されたアクアラインマラソンについての総括も行われました。来年、第2回が開催されることが決定しているものの、県が挙げていた(1)リタイヤ選手用の輸送バス不足、不十分な救護施設、(2)周辺も含め仮設トイレの不足、(3)完走率が引く・・・などの解決に努める必要があります。委員会では、実際にランナーとして参加、或いはボランティアをした委員もいるため、身を以て感じたことなどを踏まえた要望が出されていました。
教員の再任用に関する質問については、平成24年度が1270名と前の年度の1.9倍に増加。平成20年度は298名でした。今後は、大量退職時代を迎えますので、さらに希望者が増えると想定できるでしょう。これらは、ベテランが減ることによるデメリットを解消するということと、新卒採用数への影響、この2点に関しバランスを考え、慎重に議論する必要があると考えています。
また、毎年のように指摘される特別支援学校の過密化状態。年々生徒数が増加する一方で、学校が足りずに窮屈な状態で学習している生徒が多いという現状に関して、対策を続けると当局は強調しました。他方、特別支援高等学校の卒業生911名のうち就職したのは311名。偏見を無くし、1人でも多くの卒業生が就職できる環境づくりに行政が今後も取り組む必要があるでしょう。
さて、教育庁関係で私が質問したのは、教職員住宅、公立学校共済組合千葉宿泊所の2点でした。
教職員住宅に関しては、将来的に廃止の方向にあり、これまで廃止が進められる一方、新規の住宅を建設することはありません。現在ある住宅は県内各地に17住宅、30棟あり入居率は47%。私は、まず18年間も改定されていない家賃について見直すべきと追及しました。
これに対して当局の答弁は、「教職員住宅の家賃は割高で、見直す予定はない」という驚愕するもの。3DKで月額39000円の教職員住宅のどこが割高なのでしょう?この答えに納得する県民は少ないと思います。割高な理由として、民間家賃がこの間約24%下落する一方、政府統計で同じ規模の民間の社宅家賃21000円、さらに、通常の民間家賃は62000円ながら、民間は家賃補助がある・・・という点を論拠としていました。
冗談を言ってはいけません。たとえば、中小企業の給与体系で、家賃補助がどれだけなされるか、自営の場合は補助などあるのか・・・そもそも、社宅については、産業界の方では廃止の方向にある訳です。県民の感覚(“感情”ではない)からかけ離れていると言わざるを得ません。家賃補助の平均を計算してそれが支給されない人については考慮しない・・・都合の良い数字を並べる姿勢に怒りを通り越しあきれます。
さらに、教職員住宅については、廃止住宅に関して1住宅あたり80万円の草刈りや警備などの管理費がかかることが明らかになりました。廃止された26住宅のうち、処分されたのは11住宅・・・残り15住宅については、総務部の管財課などを通じ、処分できるよう努力しています。
上物がある不動産は売却に難航するのが世間の常識。外部監査では、この解体費を計上して早期処分をと指摘しています。ただ、厳しい財政の中では解体費用の計上も難しいのも事実で、それを強行させるのは酷かもしれません。今後かかる管理費との見合いで、いずれ決断する場面がくるかもしれませんが、私自身は早期売却を進めるために、一時的な損を計上しても解体を進めるべきとの考えです。
以上の教職員住宅については、10月30日付の千葉日報1面に掲載されましたが、問題として大きいのは2つ目の公立学校共済組合千葉宿泊所であると委員会に臨む際に感じました。
この宿泊所とは共済組合が運営している「ホテルポートプラザちば」のこと。事業の概要は、平成11年に建設、土地取得費76億円、建設費62億円、計138億円かけて、教職員の福利厚生を目的に建設された事業です。建物に関しては、現在、県が負担している債権の償還が終了する平成36年に、所有権が組合から県に移管。将来的なことを踏まえ、外部監査を行った公認会計士は「県としてこの事業を維持する必要性について、十分な検討が必要だろう」と指摘しています。
このホテルの業績が好調で優良資産であるなら、県民の財産になりうるので問題はありません。しかし、経営が厳しいのであればどうなるか・・・県に所有権が移管した時点で、財政の負担を大きくする要因を抱え込む格好となる訳です。
経営状況を当局に問い質したところ、24年度は4300万円の経常収益があったとのこと。黒字の事業と胸を張り、それをもとに、事業の継続性を訴えかけた訳です。ちなみに、事業継続に関しYESかNOかと聞いたところ、佐藤正巳委員長(自民党、習志野市選出)が「課長が責を負って答えるレベルの質問とは思えないので、上席者が答弁して下さい」と促したのですが、教育長、部長の首脳陣はだんまり。結局、沈黙の後、担当課長が福利厚生としての継続性を訴えました。
4300万円の黒字とは表面的なものであり、県が減価償却費や固定資産税などを負担。その額について計1億4600万円との答弁があったため、実質的には年間約1億円の赤字となる訳です。つまり、建設費の償還が終わり、本来なら移管後に事業収入を期待すべきものであるのに、その時点で経営状況が改善されていなければ、県の負担が続くことになるのは言うまでもありません。これで県民の納得が得られるでしょうか。そうなる前に売却を検討すべき・・・これは私の考えだけではなく、外部監査の公認会計士も指摘しています。
調べれば、宿泊するだけであれば、周辺に同ホテルより、宿泊料が安いホテルがあります。現時点で職員の利用度が高いのがまだ救いとなりますが、福利厚生に果たしてホテル事業まで必要なのでしょうか?
もっとも、これについては後があり、私が質問を終了した後、担当課長が「この件は共済組合の中でも問題になっており、委員会を設置してあり方を検討している」と発言(質問を終了したと私が言った後ですから、答弁とは言えません)。最初から、質問にそう答えて頂ければ、紛糾しなかったわけですが、当局の質疑に臨む姿勢についても疑問を感じたことを付け加えておきます。いずれにしても、あり方を検討するのであれば、県民に負担にならないような施策を取って欲しいと思いました。
以上ですが、ここで指摘したい点があります。福利厚生は決して悪いとは言いません。むしろ、必要でしょう。重要なのは、県民が納得できないような“過剰な福利厚生”は止めるべきといこと。適法だから構わないではなく、適正という点を一般の事業だけではなく、福利厚生の面でも考えて欲しい・・・そのように要望して質問の結びとしました。