【記者魂56】苦節1年!・・・ハラールの意見書が採択

※以下は、ハフィントン・ポストに掲載されたコラムです。

以前にもハフィントンポストにおいて取り上げたハラールだが、マスコミに取り上げられる機会が増えるなど一段と関心が高まっている。都道府県議会においても、ハラールは私が昨年6月に質問して以来、議論されるのは千葉県だけだったのが、他の議会でも取り上げられるようになった。

我が千葉県議会でも、先に行われた9月定例議会で、「海外観光客誘致のためにハラール推進を求める意見書」を上程したところ、全会一致で採択されることになり、千葉県は一気にハラールに関する先進県に躍り出たのである。

これまでは「時期尚早」という声があったほか、ムスリム観光客誘致、イスラム圏への輸出促進の重要性が理解されず、意見書を提出しては否決の繰り返し──。昨年の質問から苦節1年、イスラム経済を日本に取り込む第一歩を公的に踏み出した格好だ。

東京オリンピック・パラリンピックの2020年招致決定も、後押しする材料になったかもしれない。世界人口の約3分の1を占めるとされるイスラム教徒の人々も、五輪開催時はもちろん、それ以外の時も大勢訪れると思われるが、その際に最も重要なのはハラールに対する理解だろう。

豚肉やアルコール類がタブーである飲食関係、お祈りの場所をはじめ、彼らが気持ちよく訪日できるよう「おもてなし」することが重要となる。一方、輸出についても、ムスリムが安心して日本製品を消費して貰うために、ハラールを理解する必要があるのは言うまでもない。

さて、ハラールに対して関心が高まるとともに気になるのは、的確に対応できるかどうかという点である。現在、日本国内では食品偽装が問題となっているが、ハラールについても偽装が起きないとも限らない。ハラールの認証を取得する際、その基準が厳格であるがゆえに、守らない輩が出現する可能性がある。

かつて、イスラム圏であるインドネシアで起きた味の素の問題が記憶に新しい。偽装など起きようものなら、下手をすると国際問題に発展しかねないのだ。そして、ハラールでないのにハラールと偽装する詐欺的行為は論外として、ここで注意したいのは、単に知識不足によって、知らないうちに偽装となってしまう点である。

最近、危なっかしいと思った例を1つ挙げてみよう。あるトンカツ屋さんが「イスラム教の人も大丈夫なノンポークのメニューを用意!」と打ち出した。ノンポークなど食材がハラールであっても、豚を1度でも調理したキッチンで調理したものはハラールにはならない──つまり、このトンカツ屋さんは、厨房を完全に分けない限り、ムスリムは利用できなのである。仮に、この店にムスリムの団体客を添乗員が連れてきたら──。悪意はないとしても、問題になるのは容易に想像がつく。

これは極端な例であるものの、ビジネスを考える場合、正確な知識が必要となることがおわかりになると思う。私も、ハラールを推進するだけではなく、今後は知識を広げることにも力を注いでいくつもりだ。それが、ハラールに取り組む政治家の第一人者として大切な役割と考えている。