3月26日~28日の日程で、千葉県統合リゾート(IR)研究議員連盟で韓国に視察に行ってきました。
視察の目的は、韓国のIRの状況を見るため。韓国はカジノを解禁し、カジノを併設したIRでは、法律改正がされずリゾート施設にカジノを設置できない日本の先を行っています。今回は、都市型IRとしてソウルにあるシェラトン・ウォーカーヒル、ソウルから車で3時間の距離にある江原(カンウォン)道に江原ランドリゾートの2か所を視察。さらに、IR施設以外では、カジノ依存症(現地では中毒と称している)の対策機関である射幸産業統合監視委員会を訪れました。
この2つは今後、日本でカジノを併設したIRを建設しようとした場合、あらゆる角度から見て研究対象として必見と言えるでしょう。結論から申し上げると、IRを建設しようとするのなら、カジノは目玉の施設・・・というより、集客力を向上するためには必要となる印象です。カジノ抜きでIR建設した場合、バブル期に建設され、その多くが不良資産と化したリゾート施設と同様の経過をたどるかもしれません。
まず、ウォーカーヒルはソウル市街の中心部から離れた丘陵の上に建設された都市型リゾートホテルです。現在、韓国国内に17か所あるカジノ施設のうちの1つ。うち、ここも含めて16か所は外国人専用で、パスポートを提示しないと入場できません。見たところ、欧米系の方もいますが、目立つのは中国人。混んでいる様子はなく、テーブルやスロットに空きが多い印象です。
もう1つの江原リゾートの方は、大規模な施設でありながら、テーブルはどこも満席、スロットも混雑している日本のパチンコ店といった感じでしょうか。実は、こちらは韓国国内で唯一、韓国人が入場できる施設。聞けば、韓国人のカジノ利用者は年間で延べ300万人、1日あたり8000人が訪れるそうです。
なぜ、IRにカジノが必須か・・・そう思ったのは、まず同リゾートの収益の95%をカジノが稼ぎ出しているため。広さにして900万平方メートルを有し、コンベンションホテルやゴルフ場、スキー場などを併設するこの施設の高いクォリティはカジノが支えているのです。利用客の64%がカジノを利用するというデータも聞きました。
江原リゾートは、閉山した炭坑の跡地を利用して建設されました。閉山によって寂れる街を活性化するため、カジノ併設IRを誘致。周辺をみると、寒村という表現がピッタリ・・・山道を車で走ると忽然と近代的な施設が出現します。そんな山間の街で、江原リゾートは3198人の雇用を生み出しました。このうち63%が地元の住民です。これとは別にアルバイトを1247人雇用していますが、これは99%が地元住民とか。閉山、リゾート開発・・・日本で直ぐに思い浮かぶのは北海道の夕張でしょう。それとは大きく異なるのです。
タラレバは禁句かもしれないながら、仮に、閉山後の開発において夕張にカジノが建設されていたら・・・どうなっていたでしょうか。はっきり言って、江原リゾートは周りに目立った観光資源はありません。5年後の平昌冬季オリンピックは同じ江原道で開催されますが、それは将来の話。何かの目的がなければ、訪れる場所ではないのです。その点からも、カジノの集客力は半端ではないと言えるでしょう。余談ですけど、近隣で食事をした際、地元の人から「何でわざわざ、日本からこんな場所に来たんだ?」と言われました。
さて、このように、カジノがもたらした効果は大きいのですが、その一方、デメリットがあることを忘れてはなりません。それは、日本でもカジノ解禁が議論される時に反対派が真っ先に言う”依存症”の問題。先述したように、韓国では”中毒”と称しますが、これが問題となっています。
日本でも、パチンコ依存症が社会問題とクローズアップされていますけど、韓国でも事情は変わりません。江原に行ったまま帰って来ない・・・こんな例も少なくないとか。カジノ利用客の約2割は中毒ではないか・・・というのが、視察に訪れ話を聞いた射幸産業統合監視委員会の推定です。また、調査では国民の82%がカジノ中毒は問題、42%がかなり深刻な問題と認識しているとの結果が出ました。
先に、同委員会のことを記すと、日本の首相にあたる国務総理の下、15人の委員で構成。教育プログラムの開発など中毒対策のほか、違法カジノの摘発などを行い、射幸産業の健全化基盤の拡充を目指しています。
カジノは射幸産業の1つで、このほか、競馬、競輪、競艇、スポーツTOTO、闘牛などが対象。韓国ではアルコール、インターネット、麻薬、そして射幸産業に依存する人を4大中毒と言いますが、およそ5000万人の人口のうち7.2%が中毒とされ、これは先進国の2~3倍の水準と言います。また、最近では外国人労働者がカジノ利用で全部お金をなくす・・・といった例が相次いでいることが問題となっています。
この点から、日本とはギャンブルに対する国民性の違いはあると言えるかもしれません。しかも、パチンコが熱狂的なブームになった経緯がある日本の実情を踏まえると、参考にしたい話でもあります。
同委員会では、カジノ中毒を減らすには予防が一番と位置づけ、予防機能の拡充に乗り出しました。中で目を引いたのは、それを提示することで金額やベットに上限が設定される電子カードの導入。これは、カジノほか運営者にとってはデメリットとなるのは当然ですが、日本もカジノが解禁になった場合、参考にすべきかもしれません。このカード、世界でも例を見ない制度だそうです。
こうした点を踏まえてか、現在、カジノ建設に関し2件の申請が出ているものの、政府は許可しない方向と言います。
一方、江原ランドではKL中毒管理センターを運営。公企業の社会的責任として、独自のカジノ中毒治療システムを構築しカウンセリングを行うなど、ギャンブル依存問題に積極的に対応しています。ここでも予防が重要と位置づけていました。また、同ランドのカジノは1か月に入場できるのは15回までと制限が設けられているほか、基本的にカジノは24時間営業が多い中で午前6時~10時まで休憩時間を設けています。
IRを建設するにあたって、カジノが重要なコンテンツであるということを再認識しましたが、実際に建設した際には、依存症対策を入念に行うべきでしょう。今回の視察をIRを議論する上で、役立てたいと思っています。