【記者魂49】株価は正念場か

前週末の日経平均は大幅高となって終わったものの、直近の高値との比較においては、低い水準に位置しており、安心して見ていられる様子ではない。ただ、周足チャートで見た場合、26周移動平均線が上向きを維持しているなど、中長期の上昇トレンドが崩れておらず、株価の軌跡はアベノミクスに対する期待で始まった上昇相場が続いているとみることができよう。

アベノミクスについては、今年前半の上昇によって、第1の矢である大胆な金融緩和、第2の矢である積極財政のいずれも織り込んだとみられるため、やはり“二段上げ”に向かわせるためには、第3の矢である成長戦略が不発にならないようにする必要がある。夏相場において戻り切れなかった理由の1つに、成長戦略に対して市場は疑いを持っている点が挙げられるが、その間、相場を取り巻く環境は悪化。米国の金融緩和解除、新興国経済に対する懸念、そして、国内では消費増税が現実味を帯びつつあり、これらに対する不安を払しょくするためにも、断固たる成長戦略が必要なのだ。

そんなことを考えつつ、先週前半に夏休みを取り、ゆっくり新聞を読んだところ目を引いたのが毎日新聞に掲載された黒田日銀総裁の独占インタビュー記事。見出しには、追加緩和ちゅうちょせず・・・とあったものの、よく読めば、これは消費増税で景気が悪化した場合の措置についてであった。前回のブログで記した財務省はむろん、日銀でも増税に対して着々と対応するためのシナリオを描いている・・・そう感じさせる内容だったのである。

どう考えても、消費者はモノの値段が上がれば”防衛”に走るので、モノは売れなくなる。ここで、対症療法を強調したこと自体、増税による景気失速を日銀は強く懸念していることを示したと言えよう。

もちろん、市場のマネーをジャブジャブにしてしまえば、株価を押し上げる要因になる。しかし、何度も記してきたように、それには実需が追いつくことが不可欠。マネーの供給に需要が伴わなければ、それはバブルに過ぎず、一般の国民にとって何ら生活を豊かにすることにはならない。そうした意味においても、成長戦略が今こそ重要な時はないのである。

日経平均のチャートで言えば、今は三角もち合いを形成。中長期のトレンドで、上下いずれに行くか迷っている状況だ。海外の環境が怪しくなってきたことだけではなく、消費税率アップ、成長戦略など国内要因も踏まえ、株価は正念場に来ている・・・そうみることができよう。