【真実を発信200】芸術文化振興議連の県内視察・・・指定管理の在り方

本日は、千葉県議会芸術文化振興議員連盟の県内視察に参加しました。先週の観光議連に続き視察先は東葛地区から選ばれ、野田市の茂木本家美術館、野田市郷土博物館、野田市民会館を視察したのです。

最初に訪れたのは、茂木本家美術館。野田と言えば、しょうゆの街・・・中でもキッコーマンでおなじみですが、同美術館はその名の通り、同社創業の茂木家の本家十二代茂木七左衛門が自ら集めたコレクションをもとに、私蔵しているだけではもったいないと考え創立しました。個人の趣味の域を超えるものではないものの、近代日本画や浮世絵が展示され、工夫された建物とともに、楽しむことができます。

ちょうど、訪れた際に、「長崎絵──鎖国日本のエキゾチシズム」が開催、浮世絵では珍しい版画技法で創作された作品など、鎖国下の日本の絵師が描いた異国情緒に触れることができました。

次に訪れた野田市郷土博物館と市民会館は、同じ敷地内にあります。博物館の方は、昭和34年に千葉県で最初の登録博物館として開館、建物は日本武道館や京都タワーで有名な山田守が設計しました。正倉院の校倉造りをイメージした建物の内部には、全国でも珍しい醤油関連の資料が公開されています。しょうゆの街である野田らしさが垣間見れ、地域の考古・歴史・民族資料に関する特別展を実施してきました。

他方、野田市市民会館は茂木佐平治氏の邸宅だったものを、市民の福祉施設として活用し昭和32年に開館。敷地内にある茶室「松樹庵」が平成9年に国登録の有形文化財に、庭園は平成20年に県内初の国登録記念物に指定されています。会館は大正13年頃に建設され、昭和20年代後半まで実際に居住していました。歴史を感じる建物ですが、部屋貸し業務が行われ、訪れた際も市民の集会などに使用されていました。

これらを視察して、とりわけ印象深かったのは、郷土博物館のあり方でしょう。同博物館は、平成19年度からNPO野田文化広場が指定管理者として敷地内を管理運営しています。通常、指定管理というと、コスト削減・・・が思い浮かぶと思われますが、そのひと言では言い尽くせません。単にコストだけではなく、入場者も指定以前以後で、1万人から3万人に増加。同じコストで入場者が3倍に増え、公立博物館を指定管理者委託し、甦らせた例としては、全国でも“お手本”になる例と言えるでしょう。

これについては、法政大学教授で同NPO法人の事務局長でもある金山嘉昭さんが、「公立博物館をNPO法人に任せたら」という本を書きましたので、ご興味のある方は読んで下さい。

たとえば、指定管理者になってまず取り組んだのは、人員配置の変更。館長職などを非常勤とする一方、学芸員4人を常勤の正職員としました。県を例に挙げると、私が昨年の予算委員会で追及した千葉ニューフィルの職員給与は、事務局の平均年収が約400万円であるのに対し、楽団員のそれは半分の約200万円・・・事務方より実際に楽しませるプレーヤーの方の給料が圧倒的に安い不条理な状況となっています。それに対して、野田郷土博物館は見学者をサポートする学芸員の待遇を良くしました。どちらが理にかなっているか、語るまでもないでしょう。

役人が身を守り、実際に楽しませる人が不遇であるなど本来、あってはなりません。博物館が甦った理由として、この人員の配置転換があったことは想像に難くないでしょう。

ただ、説明をした金山さんによると、悩みがあるとか。それは、現状の指定管理では学芸員の給与を据え置きにせざるを得ないという点です。これが、自治体の直営であれば、職員として右肩上がりに推移するのですが、指定管理者の場合、他に低コストで運営できる団体が現れた場合、そちらに変わる可能があり、その点から給与を上げにくいのです。平成19年に指定された際は、随意指定でしたが、次回は競争となれば・・・その点を、同席した根本市長に訴えかけていました。

根本市長も理解を示しており、何らかの施策を考えているとのことです。たとえば、学芸員はこれまで7年間積み上げたキャリア、ノウハウがありますが、これがコストだけを念頭に置き、給与が安い若い学芸員に取って代わる事態になれば、どうなるでしょう。確かに、コスト面のメリットはありますけど、肝心の博物館の命とも言えるソフト面が劣化するのは言うまでもありません。基本的に競争行いつつ、学芸員のモチベーションを上げるなど質的維持を同時に図る・・・根本市長は、真剣に考えているとしながらも「今のところ答えが見つかっていない」と語っていました。

このように、他に代えるのが難しいレベルまでノウハウを積み重ねているケースの場合、それが住民を説得するだけの理論武装ができるのであれば、この時に初めて制度上で例外的である一団体指定が許されるのでしょう。

先に記した千葉フィルのほか、最近、市川市議会で議論になった、一団体指定のことを思い出しました。果たして、市川市のケースの場合、野田市の博物館のように一団体指定に足るだけの説得力があるのか・・・私はそのようには感じず、逆に、説得力があるケースに該当している場合は、市川市は説明を怠っていると思わざるを得ません。

今回の視察では、指定管理の在り方について考えさせられるとともに、とても勉強になりました。

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