【記者魂91】岩盤規制崩すのは容易ではない・・・佐賀知事選で思ったこと

3連休中に行われた佐賀知事選挙、改革派知事の誕生かと当初は思われたものの、結果はその旗手と目された前武雄市長の樋渡啓祐氏が破れ、元総務官僚の山口祥義が当選した。

樋渡氏は自民・公明両党の推薦、対する山口氏は地元の県農政協議会などが推薦し、いわば保守分裂選挙。山口氏は一部自民県議のほか、民主や連合の支援も受け支持を広げた格好となった。

最大の焦点は農業改革で、樋渡氏はそれを強く訴えるとともに、安倍首相ほか自民党が強く推したことは、菅官房長官が佐賀入りしたことからも伺えよう。ここから安倍政権が農業改革に本格的に取り組む姿勢を示したと印象を持った。しかし、結果は・・佐賀の民意は農業改革にNOを突きつけたのである。

樋渡氏の敗因に関して、改革派のイメージが強いながら、自公の推薦を受けたほか、原発に関しては再稼働容認の立場を取ったことなどが挙げる向きが少なくない。しかし、そうではないだろう。こと改革という点において、安倍政権は今回の焦点になった農業について、強く打ち出していた。

アベノミクスの第3の矢は、農業だけではなく医療など”岩盤規制”を崩し、成長路線を目指すとしているが、政権サイドがあれだけテコ入れしながら、改革派知事の誕生が阻まれたことが、それを進めるのは容易ではないことを実証したと言えよう。

地元の意見は、農業改革は要らないという結果となった訳だが、今回の選挙において連合も山口氏を支援したことからすると、改革派と守旧派の戦いで改革派が後退・・そんなイメージが強い。

また、選挙結果で思ったのは、いかに自民党内で改革を進めようとしても、国と地方の関係、党内に農協の強力なバックアップを受ける議員がいる限り難しいという点である。この部分は、労組系議員を抱える民主党が公務員改革に取り組めないことと似てなくもない。

いずれにして、今の政界のフレームで、岩盤規制を崩すのは極めて難しく、自民党を巻き込んだ本格的な再編が起きない限り、改革を進めることはできないと感じた。