1月30日、31日の両日で千葉県議会資源エネルギー懇話会の県外視察で。青森県は下北半島にある、日本原燃の再処理施設、リサイクル燃料貯蔵(株)、東通村の東京電力原子力発電所建設現場の3か所を見学しました。
参加したのは、懇話会のメンバーのうち25名の議員。原発推進派、反対派それぞれの立場から多くの議員が視察しました。みんなの党は「脱原発」を掲げていますので、私は反対の立場からの参加です。
まず、日本原燃ですが、ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターを稼動させているほか、再処理工場を今年10月、MOX燃料工場を2016年3月に竣工を目指しています。
MOX燃料とは、ウラン238などにプルトニウムを混合して加工した燃料。よく聞く「プルサーマル」(和製英語)とは、これを軽水炉で利用することを指します。
なぜ、原発が重宝されてきたのか──その理由は、この再処理、つまりリサイクルが可能な燃料だからです。石油、石炭などの化石燃料は1度使えば、それっきりですけど、原子力の場合、使用後に廃棄物となるのは全体の3%、残りは再生可能と言われています。
ですから、1度、ウランを輸入すれば、その大半が再利用できるため、再生事業が滞りなく行われれば、準国産のエネルギーとして、資源に乏しいわが国に貴重となる訳です。コストと安定供給という経済合理性だけの視点なら、現状では日本にとってこれ以上のエネルギーは無いと言えるかもしれません。
ただ、東日本大震災における福島第一原発事故を持ち出すまでもなく、ウランなどの放射性物質、一度暴走すれば、多大な危険をもたらします。ゆえに、安全性が担保されないうちは、使用すべきではない──というのが、みんなの党の主張です。
ただ、現時点で完全に原発をストップしても、今回、見学させて頂いた日本原燃の技術は必要となるでしょう。それは使用済みの核燃料の処理が、このまま稼動、停止いずれの場合でも考えなくてはならないからです。
低レベル廃棄物に関しては、周辺に地下トンネルを何本も掘り、それを最終処理場とするのですが、高レベル廃棄物は一時的な保管となります。30年─50年の長い時間をかけて冷やし、その後、最終的に処分するのですけど、その処分場は決まっていません。つまり、この間に最終処分場を国内外に関わらず見付けなければならないのです。
それゆえ、現在のこうした処理場の無い状況が、世間で「トイレ無きマンション」と言われているのです。
最終処理場のコストに約3兆円必要と試算されていますが、実は現在、電気料金にこの費用が1世帯あたり年間で500円上乗せされ、これまでに8000億円ほど積み立てられてきました。お金は心配ないとしても、安全面から受け入れ先が定まらず、これは将来にわたって大きな問題になることは想像に難くありません。
推進、反対のいずれの立場に立っても、最終処理場の問題に関しては、政策面において避けて通れないものとなります。
2日目に視察をしたリサイクル燃料貯蔵(株)は、リサイクル燃料を再処理するまでの間、安全に貯蔵・管理する施設として2012年の事業開始を予定しています。総事業費は1000億円ですけど、そのうち建設費は200億円。残りは、高額な貯蔵するキャスターの費用となります。
3か所目の視察先である東京電力の東通原子力発電所の工事現場。現在、福島原発の事故を受けて、本格工事の開始を見合わせています。
実は、東通村には、既に東北電力の原発が、2005年12月から稼動しました。その意味で東通村は原発の街と言ってもいいかもしれません。
視察中のバスから見たことを記すと、車窓から、立派な建物の小学校が目に入りました。ですが、ひと気はありません。過疎によって、村中の小学校、中学校が1つに統合されたためです。
それからしばらくして統合された学校が目に入ったのですが、形容するのが難しいほど立派な建て屋──小学生が500人強、中学生が200人強──厳しい財政の自治体なら、このような施設は作れないでしょう。原発が「主要産業」であることを象徴するような建造物でした。
聞けば、村議会が原発誘致を決議したのが1965年。半世紀近くも、原発が生活に溶け込んでいたかの状態となっていたのです。安全面で批判が大きい原発ですが、この村ではそうした声はほとんど聞かれないとか。ただでさえ、過疎が進んでいるため、それに代わりうる産業が見当たらない同村にとり、原発は死活問題となっている訳です。
リサイクル燃料貯蔵(株)がある、むつ市も、関係者の間からは「これがあるからこそ、同市の財政は黒字となり、なければ、財政破綻を心配しなければならなかっただろう」──そんな声が聞かれました。
原発は、このように、地方の生活者の存亡に関わってくる面があります。原発反対派の立場に立つものとして、単に「反対、反対」と叫ぶだけではいけません。電力供給面は電力の自由化など施策を訴えていますが、それだけではなく、原発に頼る自治体住民の生活面についても目を配り、それ冠する対案を真剣に考えなければならない──視察を通じて肝に銘じました。