沖縄視察の報告シリーズの最後は、最終日に視察した沖縄県立開邦高等学校についてです。
同校の視察目的は、千葉県には芸術を専門に学べる高等学校が存在せず、かりに、芸術に関する教育を充実させようとする場合、モデルになるかどうか──そう考えたためでした。
開邦高校は1986年に開校と歴史が浅い学校です。当時の西銘知事の鶴の一声で設立が決まったとされ、学校の周辺は墓地。突貫工事で建設が進められました。
県内で初めて理数科(1学年の定員120人)、英語科(同80人)、芸術科(同40人──美術と音楽が各20人)を設置。理数科、英語科は本土の大学への進学率を高めることを目的としています。今でも、県当局からは「東大進学者を輩出せよ」と言われているとか。本土でも、たとえば、東京都の日比谷高校のように石原知事の号令で、かつての名門復活を遂げたケースもありますが、開邦高校も県肝煎りの進学校と言っていいかもしれません。
なお、沖縄県立開邦高校のホームページはこの文章をクリックして下さい。
沖縄県は、義務教育における学力が全国で最低との統計があります。かつて、米国統治下では本土の国公立大学では沖縄枠というのがあったそうですが、現在はそのような下駄履きはありません。
こうしたエリート教育については、異論が多い現状があるものの、潜在能力がある子どもに少しでも上を目指して欲しい──とくに、沖縄県では「本土に追いつけ」という意識が高いため、反対意見を押し切る形で開校した経緯があります。
同校では、通常の学校が1校時から始まるところ、0校時が7時半から始まります。勉強漬けとも言えるカリキュラムですけど、生徒の目的意識もはっきりしているため、問題はありません。先生たちの理解もあるそうです。
さて、本題となる芸術科についてですけど、生徒にとって恵まれた環境と感じました。教員数は美術コースが専任2人、非常勤3人ですが、音楽コースが専任2人、非常勤23人。音楽コースは文字通りのマンツーマン指導となっています。
海外から視察に多数訪れるそうですけど、各国の関係者によると、高等教育の芸術コースで、ここまで生徒をサポートしているケースはないとか。日本どころか、世界でも最先端を行く芸術専門の高等教育となっています。
音楽科はピアノの調律を外部に委託しています。そのほか普通科などに比べてコストがかかり、応対して頂いた教頭先生によれば、県からの補助がないと成り立ちません。幸い、シーリングが厳しい中、同校は予算を前年並みに確保できたそうです。
理数科、英語科は学力向上という視点から、まだ賛同を得られそう(それでも左翼系の方からは反対の声が出そうですが・・・)なものの、芸術科に関しては理解がなければ存在そのものも危うくなるかもしれません。
教育委員会をはじめ千葉県の教育関係者が、どこまで芸術に理解を示しているがわかりませんけど、千葉から芸術関係で日本を、いや世界をリードするような人物を──そう考えるのであれば、開邦高校と同等以上の教育施設をつくる必要があるでしょう。
付け加えると、日本の芸術教育では、美術、音楽はそろっていますが、舞台系(演劇やクラシックバレエ)が弱い点が気にかかります。芸術高校を設置するのであれば、日本で初の本格的な舞台系芸術のコースを──クラシックバレエで高校生がローザンヌ国際大会で優勝という快挙を成し遂げた点から、そのような感想を抱きました。