【記者魂25】労働の対価と生産性

議会における質問で人件費問題を取り上げている。

論点の1つは、財政が厳しい中で単純にカットするというもの。これは、単純に歳出を縮減するというだけではなく、県民に必要ながら財政難でお金が回せない分野にカットした分を充当しようという、集めた税金の分配を再考するという点も含む。逆説的には、財政が厳しい状態を脱すればカットする必要はなく、視点を大きく広げれば、税収アップの施策を図ればいい訳だ。もちろん、この施策に政府が進める増税という思想はなく、あくまでも県産業を活性化させて税収の自然増を目指すことにある。

もう1つは、非効率な給与の支払いを改め、結果として無駄を省くという考えだ。具体的な例を挙げれば、昨年、千葉県では職能より上の給与を支給する「わたり」が廃止されたが、本来、自分のポジションで受け取る給与よりも多く支給されるなどおかしい、かつ論理的に言えば無駄な支出であり、是正されて当然なことだろう。自治体によっては、法令に定められていない諸手当を支給するケースが少ないようだが、これらの廃止もこの論点の1つに該当しそうだ。公務員給与において、職能給の導入に対する取り組みはポジティブと感じられないものの、効率的に給与を支給することは重要と思っている。

そう考える私の目に、とんでもないと思われるニュースが目に入った。埼玉新聞の報道で、この文章をクリックして読んで欲しい。

この記事を読むだけで、該当する職員が時間に見合った仕事をしてない・・・と断ずるつもりはない。しかし、これだけの時間外給与が支払われたのが、大勢いる職員の中でごく一握りであった点からすると、この支給が合理的であったのか疑問に思う。以前にも記したことがあるが、そもそも公務員は厳しい試験をくぐりぬけて採用された優秀な人材の集まりなのだ。突出して仕事に時間がかかる・・・この点におかしいと感じるのは筆者だけであろうか。

労働というのは、時間だけで論じてはならないと考えている。もちろん、作業内容と分量によって、仕事に要する時間に差異が生じるのは当然としても、問題はその進み方ではないか。

同じ内容の仕事で、方や1時間で完了できる人と、まる1日要する人がいて、どちらの人を採用したくなるか・・・解答を記すまでもないだろう。公務員の仕事も当然これに該当する。税金を支払う側にしてみれば、ダラダラと仕事をして欲しくない(記事中の人物を指しているのではないことを断っておく)と思うのは当然だ。逆に言えば、生産性の高い人に対しては、仕事が短縮される分のコスト(たとえば光熱費)が軽減される点も踏まえ、インセンティブを与えるべきと考えることができる。

仕事は内容によって、時間給で支払うのが適切なものもあるが、そうでない内容・分野まで時間給を適用しようとすることがそもそもの間違い。さらに、前者の場合でも、テキパキ片付ける人とダラダラやる人の給与が同じということも、本来あってはならないだろう。仕事も職種、仕事の内容を吟味して、生産性に応じて適切な労働対価を支払うことが、財政難が叫ばれる各自治体において求められているのではないか。一生懸命働く人、能力の高い人・・・これらと真面目に働かない人、効率の悪い人の待遇が同じでは、生産性が低下するリスクが高まってしまう。旧ソ連など共産圏国家は、その非効率なシステムによって、やがて崩壊してしまった歴史があるのだから・・・。