以前も、みんなの党について表題のようなことを書いたが、所属議員の1人として現状について説明することは大切であるため、改めて自分の考え方を記すことにした。
議席をお預かりして2年半余り、議会活動を通じてみんなの党のスタンスの“喩え”として、よく聞かれたのがこの2つのフレーズである。正確に言えば、「自民党改革派」というのは「第2自民党」で、これは主に県が提示した条例案や自民党が提出した意見書などに賛成した際、主に左の勢力が私たちを攻撃する時に使ったフレーズ。半面、「保守の共産党」は反対した時に聞かれたのは語るまでもない。ここで敢えて「第2自民党」を「自民党改革派」と変えたのは、詳細は後述するが、自分が入党する際に、そうしたイメージを自分の頭の中で描いていたのが大きな理由だ。
いずれにしても、これらは褒め言葉として使われた感じはしない。「お前らは結局、自民党と同じじゃないか」「何だ、あいつらは保守のくせに融通が利かない」などと侮蔑の意味が込められていると感じたが、私は一向に気にならなかった。活動に対して、正反対の表現が同じ時期になされるということは、正しいものは正しい、間違ったことは間違っている・・・とブレずに是々非々の政治姿勢を貫いていることの証左になるからである。
そして、現在、この2つのフレーズが大きな意味を持つ、ある意味、岐路に立つような状況となってきた。渡辺代表が党所属国会議員の国政報告会で「与党に入らないと政策実現はできない」と発言したことが波紋を呼んだのが背景にある。私は、その場におらず、この件に関し代表とお話した訳でもないので、以下に記すのは、報道に基づいた情報による、あくまでも私個人の考え方であることを、あらかじめ断っておく。
「与党に入らないと政策実現はできない」の意味だが、これは語るまでもない。私自身も、政策を実現させるために、千葉県議会において努力を重ねてきたものの、そうした中で身を以て体験したことでもある。
今任期のスタート時に、千葉県議会は最大会派である自民党は定数95のうち56議席と圧倒的多数を保持。8つある常任委員会で委員長ポストを独占して、なお過半数を制することができる、いわば、絶対安定多数を誇る。欠員が生じている今もそれは変わらない。中央では連立与党の一角である公明党が、かりに彼らが反対の姿勢を取って他の会派が束になってかかろうが、自民党の意思一つで決まってしまう状態だ。
県議会で3議席しか有していないみんなの党の所属議員として政策を実現させるには、いかに県民のために良いと思われる政策であっても、自民党に賛成して貰わなければ日の目を見ることはない。最近、私はハラールについて取り組み、これに関連する意見書が議会で採択されたが、自民党の関係者にご理解して貰うまで1年の長い時間を費やした。他の案件についても、自民党と協議を重ねるなどして、実現するために努力を重ねたケースが少なからずある。
逆に、自民党の賛同が得られれば話はスムーズに進む。他の会派から強硬な反対意見が出ようとも、多数決で決めることができるのだ。渡辺代表が政策実現のために“テコの原理”を使う・・・というのは自らの体験からも、痛いほど理解できるのである。離党された柿澤未途代議士も同様の趣旨のことを記されていたが、私もまったくの同感。連立という選択肢は決して間違いではない。自分が千葉県のための政策を実現したいという強い思いを抱けば抱くほど、そう感じるのである。
とは言え、今の自民党に対しては、丸呑みするのではなく、是々非々の対応が必要だ。冒頭で抱いたイメージを「自民党改革派」と記した意味もそこにある。みんなの党に入党する以前の私は、自民党サイドの人間であったことは、このブログでも記した。自民党を見限った大きな理由は、同党の綱領から「小さな政府を目指す」という文言が消え、改革路線が後退、自分の政治信条から離れてしまったと考えたため。ゆえに、我が党を「第2自民党」と称するのは、喩えであっても心情的に許せない。
一方、「保守の共産党」という喩えについでだが、こちらの方も記してみる。関係者と話をして必ずしもそうとは言い切れない部分がありながらも、ごく一般的なイメージとして、共産党は何でも反対するというイメージが世間であると思う。名誉のために記すと、それは彼らの考えに基づくものである上、そもそも多数を占める保守勢力とは考え方、信条が受け入れられないものであり、与党側が提出する法律案、条例案に反対するのは当然のこと。だが、全会一致の賛成でまとまるケースもあるなど、政治信条や哲学を越えて世の中のためになると思われることについて共産党も反対はしないのである。
それでも、頑なに反対を貫く姿勢であるのも事実だろう。逆に言えば、妥協を一切排除することなければ、少数派であるがゆえに、議場を通じては政策も一切反映されることはない。「革命闘争は1日にしてならず」とばかり熱烈に支援する、或いは「とにかく政治の世界に野党勢力は必要」と目的を単に翼賛化を防ぐことを第一に考えるだけであるなら、それでもいいだろう。しかし、本当に実現したい政策がある時、それも、保守共通、或いは保守勢力なら理解して貰えるものが目の前にある場合、この姿勢で良いのだろうかと考える。もちろん、実現するために魂を売るがごとく安易な妥協をしてはならないものの、原理主義のような振る舞いは自分の首を絞める結果をもたらさないとも限らない。
自身の経験から言えば、議会では「自民党改革派」とみられる行動が多かったものの、明らかに行財政改革に逆行する、これ以上の妥協はアジェンダから外れる・・・そうした条例案、意見書などには反対を貫いてきた。共産党も賛成したため我が会派所属3人だけ反対だったという例もある。自民党の意見書に反対し、有力議員から窘められたこともあったが、決してブレることはなかった。
話を元に戻そう。先述した「自民党改革派」か「保守の共産党」の2つのフレーズで岐路に立つというのは、このまま連立に向けて動き出した場合、党のレゾンデートルは何かを改めて考える必要が生じると私は考える。もっと言及すれば、さらには、内からの改革か、外からの改革か・・・その選択肢を前にしているというのが、正直な感想だ。これまで強調してきた「是々非々」の意味を、どう位置付けるかも議論の対象になろう。
意見が対立すれば、双方が攻撃し合うことは生じるのは当然のことで、それをもって”党分裂”というわかりやすいワンフレーズで表現するのは簡単だ。しかし、以前にも書いたように、ここでの意見対立は決して政策によるものではないのである。まもなく発足する「既得権益を打破する会」の主張をみて欲しい。みんなの党が強調している政策とどこが違うのか。憲法問題など水と油くらい主張が異なる勢力が混在する民主党は言うに及ばず、国論を二分するTPPで反対派を多く抱える自民党など、他党の“分裂の芽”とは本質的に異なっているのだ。重要政策で大きな相違点があることは、支持した者にとって不幸なことと言っていいだろう。
純化路線というのは、政策の本質を語っているのではない。一方の再編路線、これも政策から起因するものではないのは明らか。総論は変わらず、各論での対立なのである。ただ、これまでの経緯からすると、現状は目指す路線が「早い段階に現実論から改革を」と「時間をかけても理想論から改革を」に分かれていると思えてならない。政治のプロの喩えを借りれば「第2自民党」(私は「自民党改革派」と強調したい)か「保守の共産党」ということになろうか。私は、今回の特定秘密保護法案で考えることはあったものの、路線としては前者の方が良いと考えている。
繰り返すが、これまで離党された方も含めて、党関係者の間で総論について意見の相違はないと思う。意見対立という事象そのものだけを報じるマスコミに、出身者として情けなく感じるが、そう言ってもごまめの歯ぎしり。筋を通し参議院の問責決議案に賛成すれば「重要法案が通らずけしからん。お前ら保守の共産党か」となり、内容はともかく特定秘密保護法案で与党と協議すれば「自公政権にすり寄ってけしからん。第2自民党に成り下がったか」となる。是々非々を貫くという姿勢は、こういうことなのだと思うので、先述したように気にしないが・・・。
かりに、与党との連携をどうするか進めようとした場合、その過程で「是々非々」が問われるのであろう。話し合いの場で妥協を迫られることも当然想定されるが、改革を忘れるがごとくの振る舞いをすれば、有権者だけではなく私も含め所属議員も見放すことになる。そこで初めて、先述した「是々非々」の位置付けが重要となり、その解釈を巡って激しい対立が起きうる訳で、政策論争となっていない今の段階(離党者については既に解釈の相違があった可能性もあるが、路線の相違を理由にするのなら言語道断!)で、党を割る行為などあり得ないと考えられるのである。
最後に、この文章をマスコミ関係者の方がお読みになっているとしたら、ミスリードすることなく、アジェンダにおいて対立が起きていないという点を留意して欲しいと付け加えておく。