沖縄県は周りが海に囲まれています。地震による津波のほか、台風の通り道になるため、高潮への備えなど護岸整備が欠かせません。
県内のエネルギー供給に関しては、地理的な条件から発電所は水力、原子力が難しく、火力発電、さらに離島はディーゼル発電に頼ってきました。これらは原燃料を運び込むため、沿岸部に立地しています。
加えて、本土から離れていることから、沖縄電力は非常事態が発生した場合に、電力会社間で電気を融通する広域融通の枠外にあることから、災害時の電源確保が課題となってきました。
一方、ペルシャ湾岸からタンカーで原油を輸送する際、沖縄県は日本の入り口に位置します。その条件から、中継基地として活用されてきました。この施設も当然のことながら、海岸沿いに立地するため、津波・高潮対策が必要──。
今回の視察では、沖縄電力、そしてJXとコスモ石油が合弁で設立した沖縄石油基地の2社について、災害対策への取り組みがどうなっているか視察しました。
まず、津波ですけど、沖縄県のうち本島では、有史以来、津波による直接的な被害は60年代のチリ地震であった程度。巨大地震も起きていません。
ただ、1771年に起きた八重山地震では、石垣島で1万人の死者が出たとの記録が残っています。そのため、沖縄電力では石垣第2発電所を稼動する際、2013年度に廃止を予定していた石垣発電所のユニットを休止の扱いに変更、津波被害を想定して電源確保の備えとするほか、全体的に震災後は火力発電所に非常用電源の設置を検討したほか、耐震補強を実施しました。
むしろ、毎年襲う台風への対策が重要です。912ヘクトパスカルという空前の規模だった2003年に宮古島を襲った台風では、同島で最大瞬間風速80メートル以上を記録。宮古島近辺で約24時間止まったことで、コンクリート造りの家が18戸全壊、ほぼ10日間の停電を余儀なくされました。
道路をふさぐ電柱の連続倒壊といった被害もあったため、二重電柱の設置、2つの離島に4基設置している風力発電に関しては可倒式の風車を設置するなどの対策を施しています。
他方、国内使用量の約6日分の原油備蓄を行っている沖縄石油基地は、うるま市にある平安座島と宮城島の間にある浅瀬を埋め立てて備蓄プラントが建設されました。ここでは、タンクについて本土が風速60メートルに耐える設計なのに対し、風速80メートルに耐えうる仕様になっています。
東日本大震災以降は、大規模訓練を実施。タンクに万一、発生した場合、消防車の約10倍の放水量を誇る大容量泡放射システムが活躍することになります。震災の際に、炎上した市原市の火災はLNGガスのタンクだったため、安全の観点から燃やし尽くすようにしました。石油の場合はすぐ消すようにするそうです。
今回の視察において、津波対策として筆者が最も注目したのは、県内の各自治体が、沖縄電力の電柱に標高何メートルかを知らせる「海抜表示シート」を設置している点です。
これは、各自治体が作成したシートを、無償で電柱に貼らせるというもの。沖縄電力の関係者によると、昨年12月末時点で県内570か所に設置。シートは、市町村ごとにバラバラのため、県は統一様式のガイドラインを昨年11月に策定し、今後、その数を増やしていくといいます。
同じような試みは、全国で沖縄県を除くと北海道の一部の自治体が実施しているのみとか。海岸部の多い千葉県でもぜひ導入したいと感じました。
シートは、海抜5メートル未満を赤、6~19メートルを黄、20メートル以上を青でそれぞれ表示。自治体によって、取り組みに差があるようですが、海岸部では表示シートへの関心が高いとのことでした。