【記者魂21】同点決勝・・・議長決裁に!

昨日の一般質問で取り上げた「仕組み債」の問題。自治体において、この問題で有名になったのが、兵庫県の朝来(あさご)市である。

旧但馬の山間にあるのどかな街、竹田城など観光資源がある人口3万人の同市で、運用資産の半分を投じた仕組み債の巨額な評価損が発覚してから3年ほど経過する。昨日の質問でも、この件に触れたが、今日は市議会で重要な採決が行われたのだ。

その採決は、仕組み債を同市に売った金融機関に対して、損害賠償請求する裁判を起こすか否かという議案。定数20人で欠員が1人の同議会で、賛否は9対9の同数となったのである。

同点決勝ならぬ、議長決裁が行われて、議案はかろうじて通過することとなり、議会事務局によると、そのまま提訴に踏み切る見込みという。

個人的には、「買い手責任の重さ」などを踏まえ、売り手から取り戻すために司法の判断を仰ぐのは、避けるべきと感じている。同僚で、会派の政調会長、金融機関に在職したこともある松戸議員は、最近の金融機関はコンプライアンスがしっかりしているため、提訴しても勝つのは難しいとの見方から、やはり提訴はしない方がいいとの意見だった。

もっとも、最近の司法は売り手に厳しいといった印象を個人的に考えているため、100%負ける裁判とは言い切れない。金融機関側が敗訴したり、負けないまでも調停で損害のごく一部でも支払うことになれば・・・。

国内外の金融機関にとって、かつての消費者金融の過払い請求の二の舞とまでならないまでも、収益ロスの材料になることは確かだ。感情を交えなければ、買い手責任も問われると思うのだが・・・。提訴先が、何かと標的にされやすく、かつ、日本の司法が厳格な目を向けがちな印象もある、メガバンクの一角というのが、下級審において微妙な影響を与えないか心配と説く事情通もいる。

昨日の質問では、千葉県の外郭団体の仕組み債損失問題について、対応策として提訴も選択肢としてあるか・・・と質問したものの、それに対して当局は官僚答弁だった。しかし、かりに朝来市に有利な判決が下された場合、含み損を抱える各自治体や公社、外郭団体は一斉に提訴に踏み切る・・・という可能性も生じるだけに、議長決裁によって決まった提訴、この行方に注目したい。