「想像以上に酷かった」・・・6月議会の一般質問で私が取り上げてから、議会でもたびたび話題になる4つの公社・外郭団体による仕組み債運用の実態に関し、その詳細が明らかになるにつれ抱いた感想です。
平成22年度末に32億5000万円だった評価損は、前年度末で27億円まで改善しており、満期まで保有すれば実損は発生しない・・・そのような見方があるものの、そんな甘いものではありません。
まず、4団体合計で84本購入した仕組み債のうち、当初、満期保有目的で購入したのは23本、残りの61本については満期保有目的以外、つまり、利益が発生した段階で売却しようとするものでした。満期保有目的以外で評価損が発生した場合、運用の世界の常識では“負け”となり、その後の対処として損切り、或いは、満期保有に切り替えます。
個人投資家の株式投資にたとえれば、すぐに上昇し利益を確保しようとした銘柄が予想に反して値下がりし、その後は“塩漬け”として保有し続ける・・・それと同じことと言えるでしょう。多くの場合、そのまま持ち続けても良いことなどなく(好材料が出て一発逆転も稀にありますが・・・)、上手な投資家の場合、ロスカットして傷を浅くとどめ、次の機会に備えます。
元本が保証されている債券投資・運用では、満期まで保有すれば元手は返ってくるので、満期保有で乗り切ろうとする考えは、そこから出てくるのです。運用効率の悪さから、私は好ましくないと思っていますけど、大切な資金をこれ以上毀損させない(仕組み債を購入したこと自体、毀損させてはならない資金で購入することはおかしな話ですが・・・)ためには、それもまったく理解できない訳ではありません。
しかし、この考え方はあくまでも、資金を投じた商品の元本が保証されているのが条件です。では、元本保障でない場合はどうなるでしょう。満期まで保有したとしても、全額戻ってくる保証がないのです。
4団体のうち、ちば国際コンベンションビューロー、かずさDNA研究所の2団体は、購入金額も小さい上、すべてが満期保有目的かつ元本保証となっています。ところが、千葉県私学教育振興財団、千葉県漁業振興基金の2団体については、すべてが元本保証されている訳ではありません。それどころか、4団体の購入金額117億円のうち、元本保証額は30億円強、率にして26%しか元本が保証されていないのです。
私学と漁業2団体についての詳細は以下の通り。
〇私学教育振興財団
満期保有以外 ・・・本数 16 取得金額 15億6569万円
(うち元本保証) 13 12億6569万円
満期保有目的以外・・・ 45 39億9875万円
(うち元本保証) なし
合計 ・・・ 61 55億6446万円
(うち元本保証) 13 12億6569万円
〇千葉県漁業振興基金
満期保有以外 ・・・本数 1 取得金額 2億円
(うち元本保証) 1 2億円
満期保有目的以外・・・ 16 46億9901万円
(うち元本保証) 1 3億円
合計 ・・・ 17 48億9901万円
(うち元本保証) 2 5億円
運用成績が悪いながらも、専門家を置き体制を整えている漁業基金は、その姿勢の可否は別にして、理にかなったポートフォリオと解釈することも可能です。しかし、運用体制が杜撰な私学財団は、購入本数の多さもさることながら、満期保有を目的に投じたものの中にも元本保証でない債券も存在。何を考えて購入したのか・・・満期保有目的外の債券を元本保証無しで大量に買った点は、攻撃的な運用を目指したためと解釈するなど百歩譲ったとしても、満期保有目的で元本保証されていない債券を購入した行為に関しては理解に苦しみます。
元本保証されている債券の方が少ないという現状では、安易に満期保有などと言うべきではありません。今後の対応を考える上でも、この4分の3が元本保証されていないという事実を踏まえた上で、購入した債券を1本1本、状況を精査する必要があると思います。実現損が発生する可能性がある以上、より慎重な対処しなければならないでしょう。
おそらく、9月議会が閉会した後に行われる決算審査特別委員会でも、仕組み債の問題は追及されるでしょう。私は一般質問などで登壇の機会が当面ないため、この件に関する追及を同委員である同僚の松戸県議に託します。