【真実を発信372】熊本市が目指すコンパクトシティ・・・県土整備常任委員会視察(2)

県外視察の報告が滞ってしまいましたが、今回は第2回、場所を博多から熊本に映し、都市計画と都市景観を視察テーマとし、熊本市コンパクトシティについて関係者の話をヒアリングするとともに、熊本駅周辺地区を視察しました。

熊本市は平成21年に第2次都市マスタープランを策定、そこでは「豊かな水と緑、多様な都市サービスが支える活力ある多核連携都市」を掲げています。この多核連携都市というのがコンパクトシティ。同市は、たとえば水道水を地下水で100%賄っていますが、これは全国の政令市で熊本だけであるほか、近隣には阿蘇山を控えるなど豊かな自然に恵まれています。売りになるのは、全国的に人気を博すゆるキャラの「くまもん」だけではありません。

そこでは、商業・業務・文化など様々な機能が集積する中心市街地と、行政・医療・商業など地域の生活サービス機能が充実した地域拠点を核として、これらを結ぶ基幹公共交通軸沿線の居住誘導を図り、コンパクトシティを実現しようとしています。計画期間は平成24年度から32年度。計画区域の面積は1062haにも及びます。

交通機関としては、熊本市には既存インフラとしてバスのほか、路面電車(市電)が走っています。この市電があってこそ進ちょくする計画と言えるかもしれません。誘導する居住エリアとしては、市電の駅から概ね500m、1日に75本以上運行するバスの停留所から300m、これらを15か所を地域拠点として集約、8軸の交通網で結ぶとしています。

全国どこでも今後悩む問題として人口減少がありますが、熊本も例外ではありません。人口減は避けられないものの、熊本では「人口密度を低下させない」を合言葉に上記の政策に取り組み、来たる人口減少の時代に都市機能が低下しないことを目指しているのです。

ただ、コンパクトシティに関して、「これで良いのか」と疑問の声が出ていました。居住促進エリアに住む住民はいいとしても、その指定地域以外では将来的に限界集落が点在しないとも限りません。居住促進は強制力は伴わないだけに、なおのことです。熊本市が合併した周辺旧自治体に居住促進地域から漏れたところが多く、被合併地域の住民はどう思っているのでしょうか。

もちろん、将来的な財政を踏まえれば、コンパクト化は有用な施策でしょう。しかし、取り残される地域が出現、さらには、合併以前の旧熊本市居住者に重きを置いたように思える点などを踏まえると、一つの街づくりのモデルであるのは確かながら、果たし正しい姿なのか疑問に思った次第です。このプロジェクトの進行とともに、郊外地域の活性化にどう取り組むかみたいと思いました。

一方、熊本駅周辺地区の視察では、熊本県・熊本市が魅力的で賑わいのある県都の陸の玄関口を実現するために、平成30年までに様々な私鉄の整備を実施しようとするもの。県と市で「熊本駅周辺地域都市空間デザイン会議」を設置、多くの学識経験者や専門家によって、デザインの統一性や一貫性などを協議し、計画を進めています。

自治体主導の計画ながら、駅周辺の建物は民間所有が多いため、民間の協力が欠かせません。原色に近い色は景観にそぐわないため、民間に協力を要請、実際に応じたビル所有者もいたそうです。その結果、平成25年度には「都市景観大賞」(国土交通大臣賞)を受賞しました。

奇天烈なデザインでないにせよ、誰もが無秩序に勝手気ままに周りとの調和を考えずに建物を建てたら、街に一体感がなく、訪れた人に不安感を与えることもあるでしょう。今後も、各地で再開発が行われるでしょうが、そこで参考になるケースだと思います。